ロシア制裁の返り血を浴びつつある欧州(写真:ロイター/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、3月15日から2日間にわたって開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(FFレート)を0.25%引き上げて年0.25~0.50%とすることを決定した。同時に公表されたドットチャートでは、FRBは年内に0.25%ずつ今後6回の追加利上げを行う可能性が示唆された。

 つまるところ、今年中にFFレートは2%近傍にまで引き上げられることになりそうだ。すでに米国のインフレは、2月の消費者物価が前年比7.9%上昇と1972年以来の高水準となるなど、加速が目覚ましい。市場の見方は分かれているようだが、インフレ抑制姿勢を強めるパウエル議長の下、FRBは追加利上げ路線を歩むことになる。

 他方で、欧州連合(EU)の中央銀行である欧州中銀(ECB)も、3月10日に開催した定例理事会において、金融緩和の縮小を加速させると決定した。具体的には、量的緩和政策に相当する資産購入プログラム(APP)の段階的な縮小のスケジュールを従来よりも早めて、データ次第では7〜9月にも終了するという方針を示した。

 同時に、ECBは声明で、利上げに関してはAPP終了後にしばらく時間を置いてから実施するとともに、追加利上げも段階的に行うという方針を明らかにした。利上げに関するECBとFRBのスタンスの違いが鮮明となった形だ。ECBがこのように利上げについて慎重である背景には、いったいどのような理由があるのだろうか。