イタコが絶えつつある理由
──イタコそのものも風前の灯火です。
江刺家:東日本大震災の前まで、八戸の周辺には14~15人のイタコがいましたが、2010年代になると、高齢化の影響で急速に消えていきました。特に、イタコの技法を伝える師匠イタコが絶えてしまった影響が大きいですね。
イタコにはイタコを育てる師匠イタコがいます。師匠イタコは通常のイタコ仕事の合間に弟子を取り、イタコの技法を教える存在で、神道の祝詞やお祓いの方法、仏教の経文など通常のイタコよりも多くの知識を備えていました。
松田広子の師匠だった林ませが唯一の師匠イタコでしたが、師匠イタコの後継者を残すことなく2000年代前半に亡くなったため、イタコを育てる道が途絶えてしまった。
また、食糧事情や衛生環境の改善によって、はしかなどで失明する女性は減りました。仮に失明したとしても、盲学校に行き、就労する道は開かれています。教える人間の不在と潜在的にイタコになり得る女性の減少を考えると、このまま何もしないでいれば、絶えていくことは確実でしょう。
ただ、イタコの唱え言については民俗調査の一環として記録が数多く残っています。残っているイタコを軸に、青森県いたこ巫技伝承保存協会の方で後継者を育成していくことを考えています。(文中敬称略)
【参考情報】
写真集「Talking To The Dead」クラウドファンディングを3月26日から実施していますので、ぜひご支援いただければ幸いです。
「失われていくイタコ文化を後世に遺したい!写真集製作プロジェクト」(https://readyfor.jp/projects/90007)
また、日本独自のアートカルチャーを発信するギャラリースペース、True Romance Art Projects(東京・渋谷)において、国際的なフォトグラファー、和多田アヤ氏によるイタコ写真展「Talking to The Dead」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000097490.html)を開催します。
なお、4月3日には、「Talking To The Dead」にも寄稿いただいた宗教ジャーナリストの鵜飼秀徳氏と、今回のプロジェクトを担当している蛙企画の篠原匡のトークセッション(15〜16時予定、先着順)、9日午後にはフォトグラファー・和多田アヤ氏のトークセッションも予定しておりますので、ふるってご参加下さい。
「Talking To The Dead」
会期:4月1日(金) ー 4月17日(日)
開廊時間:11-19時
会場:東京都渋谷区神南1丁目20 - 7 川原ビル 4F
Instagram連絡先:@true_romance_art_projects