1キロ先まで毎日水汲み
小さな公園にある湧水にはポリタンクを持った人々が水を汲みに集まっていた。順番を待つ間、どの顔も不安そうに空や辺りの建物を見上げている。人が集まる場所は狙われるからだ。順番を待つ列の中に一人の少年がいた。ミハイロというその少年の家は1キロ程離れたところだという。ポリタンク2つは水を入れるとかなりの重さだ。
「もう慣れたから平気さ」
と、ミハイロはマメが潰れて硬くなった手のひらを目の前にかざして見せた。その手は水汲みの他に近くの雑木林で薪拾いもする。
「木の葉が落ちた冬は丸見えになるからとても危ないんだ。積もった枯葉を踏む音や枝を折る音にもドキドキしながら集めているんだ」
こんな事が起こらなければ、普通に学校に通い友達とふざけあったりしているであろう目の前の少年は、今、一杯のスープのために命を賭けている。
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