(姫田 小夏:ジャーナリスト)
ロシアによるウクライナ侵攻が世界の資源調達や物流に大きな影響をもたらしている。肥料として使われる塩化カリウムもその1つで、全量輸入に頼る日本でも危機感が高まっている。塩化カリウムの輸送ルートをたどると、中国の「一帯一路」が迂回路として利用されている実態が浮かび上がってくる。
資源調達、一極集中のリスク
窒素、リン酸、カリウムは、高収穫を目指す農業には欠かせない複合肥料の3大成分だ。塩化カリウムの世界生産量は年間4300万トン(2020年、アメリカ地質調査所)。その9割は肥料として使われ、カナダ、ベラルーシ、ロシアという3カ国の生産量は全体の約6割超を占めるといわれている。
日本は塩化カリウムを全量輸入に頼っている。2019年7月~2020年8月にかけて49.8万トンを輸入した(農林水産省、財務省)。主な輸入相手国はカナダ(31.9万トン、構成比65%)、ベラルーシ(6.1万トン、12%)、ロシア(5.5万トン、11%)などである。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻により、ベラルーシとロシアからの輸入は危うくなった。塩化カリウムの輸入は、肥料メーカーや商社、全国農業協同組合連合会(JA全農)などが行っているが、JA全農は「今回のウクライナ侵攻を受けて現在ロシアからの輸入を停止している」という。