停滞から抜け出しスピード感を取り戻したソニー

 見方によっては4輪ビジネスでは利益がほとんど出ないという苦境に陥っているホンダのやむなき判断とも受け取れるが、会見での雰囲気はそれとは違っていた。

 ソニーブランドのクルマの登場は3年後の2025年を見込むが、どういうクルマになるかはまだハッキリしていない。両社長から頻々と飛び出したのは“新しい価値”、“化学変化”という言葉。やっているうちに今はまだない面白いことが起こるのではないかというワクワク感を期待しているようだった。

 このプロジェクトの元になった両社の社員レベルでのワークショップは昨年夏に始まったという。その結果を見て吉田社長とホンダの三部敏宏社長が直接交流したのが昨年末。それからCESでのソニーの思わせぶりなプレゼンテーションを挟んで2カ月あまりで協業の発表に至ったというのはリーマンショック前後の厳しい停滞からソニーがスピード感を取り戻したことをいやが上にも感じさせる。

 その判断の早さは実は企業の能力の高さに由来するものではない。成功の確信を得られるまで熟慮していては時を浪費するだけ、行動を起こしてみて問題があったらその都度いい手を考えるというベンチャースピリット的な姿勢がそうさせたと言える。