今年1月にBEVのコンセプトカーを初公開したソニー(写真:ロイター/アフロ)

(井元康一郎:自動車ジャーナリスト)

 今年1月4日、北米家電ショー、CESでコンセプトカー「VISION-S 02」を公開し、自社ブランドのバッテリー式電気自動車(BEV)をリリースする意思を明らかにしたソニー。それからちょうど2カ月後の3月4日、BEV事業でホンダと提携すると電撃発表した。

突如浮かび上がったアライアンスの要点

 吉田憲一郎・ソニー社長はCESの時点では新会社ソニー・モビリティを立ち上げ、どういうビジネス展開が可能かを模索していくと語ってはいたものの、ビジョンのアウトラインをハッキリ示したわけではなかった。が、提携発表直後に行った記者会見では、それより格段に具体的な考えを述べた。

 そこから浮かび上がったアライアンスの要点はおよそ次のようなものと考えていい。

・ソニー車を作るための新たな合弁会社を設立する
・ソニーブランドのクルマの開発・生産はホンダが行う
・ソニーブランドのクルマはホンダのラインナップとは別物
・ソニーは自動運転の中核となるセンサー、ネットワーク、エンターテインメントなどの技術を組み合わせて広く提供するプラットフォーマーを目指す。ホンダの採用が前提ではない

 今、自動車業界ではアップル、グーグル、マイクロソフトなどのプラットフォーマーの圧力が日増しに高まっている。自動車メーカーにとってプラットフォーマーの手のひらに乗るのはきわめて大きな抵抗感を覚えること。アップルが自社ブランドのクルマを作ると発表したが、生産を受け持ってくれる自動車メーカーはいまだに見つかっておらず、委託方式を断念して自社開発を行うという噂も出てきている。

 そのような中、今後の自動車の付加価値のカギを握るネットワークや自動運転に必要なセンサー、コンピューティング技術を持つ企業のブランドのクルマづくりを引き受けるホンダの判断は異例と言える。