ウクライナ情勢を受けて原油や小麦、魚介類などの価格上昇が危惧される(写真:ロイター/アフロ)

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(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

 個人消費はコロナ禍前を下回ったまま低迷している。家計調査で消費支出額の内訳をみると、コロナ禍前を上回った項目と下回ったままの項目で明暗がはっきりと分かれているのが特徴だ。

 支出額がコロナ禍前を上回った項目は、食品などの巣ごもり需要が中心だ。一方、コロナ禍前を大きく下回ったままの項目は、やはり外出自粛や三密回避の影響が色濃く表れている。

 巣ごもりで食品の支出は増えているが、当面は食品価格の上昇が懸念材料だ。円安や原油高、穀物高が重なり、既に多くの品目で価格が上昇している。ウクライナ情勢の緊迫化は、経済の観点からみれば、さらなる食品価格の上昇をもたらしかねず、個人消費には打撃だ。

 感染が収束すれば、外出自粛が和らぎ、個人消費全体は回復しよう。ただし、感染が収束しても、テレワーク普及やつきあいの縮小など、ウィズコロナのニューノーマルにより、一部では戻り切らない品目もあろう。ニューノーマルは、長い目でみれば個人消費全体の制約にはならないとみられるが、消費構成の不可逆的な変化をもたらしそうだ。

 個人消費は、2020年春に急激に減少した。新型コロナウイルスの第1波が到来、感染を回避するため外出を自粛する動きが広がったほか、1回目の緊急事態宣言発令により企業の生産活動や営業活動が制限されたためだ。

 消費総合指数でみると、2020年5月の個人消費はコロナ禍前の平均的な水準を15%程度も下回った。

 感染第1波の収束後、個人消費は持ち直したが、コロナ禍前を5%程度下回る水準で一進一退となっている。

 マクロ面からみれば、政府の経済政策の恩恵により雇用が維持され、給付金も支給されており、所得側に深刻な問題が生じているわけではない。個人消費の低迷は、やはり新型コロナウイルスの影響が大きいだろう。感染が繰り返し拡大する下で、外出自粛や店舗の営業制限が断続的に生じており、消費機会が度々失われている。