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写真:ロイター/アフロ

(文:名越健郎)

ついに始まったロシア軍のウクライナ侵攻は、どのような形で終わるのか。その答えの1つとなる綿密な“スケジュール”を、政権に近い学者が公表した。それは「併合」ではなく「傀儡政権」の樹立に向かうものだった――。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月24日、ウクライナでの「特別軍事作戦」を軍に指示し、ロシア軍が全面侵攻を開始した。大統領は停戦合意を含む「ミンスク2」を自ら破棄し、一気に戦端を開いた。

 大統領は国民向け演説で、「ウクライナの非武装化と非ナチ化」が作戦の目的だと指摘。ウクライナ軍将兵に武器を捨て、自宅に戻るよう求めた。

 北大西洋条約機構(NATO)加盟問題などをめぐり、対立を深めたロシア・ウクライナ関係は、遂に最悪の局面を迎えた。

政権の5段階駐留案

 ロシア軍は初日のミサイル攻撃に続いて地上軍が東、南、北から次々にウクライナに進撃したが、今後のスケジュールは不明だ。攻撃の期間や地上軍の任務、占領範囲などは明らかでない。

 その中で、クレムリンに近い政治学者、セルゲイ・マルコフ氏が24日、リベラル系ラジオ局『モスクワのこだま』(電子版)で、「政権の作戦スケジュール」を公表した。

 それによると、侵攻作戦の目的は「兄弟国の非軍事化」で、「権力を平和な民に戻す」としている。

 同氏によれば、作戦は以下の5段階から成る。

第1段階=ウクライナの防空軍、空軍を制圧し、制空権を確保する。これは2月24日に行う。

第2段階=ウクライナ軍の包囲と武装解除。ここで重要なのは、ウクライナ軍の犠牲を最小限に抑えること。彼らはわれわれの仲間であり、作戦は2月末の数日間で行う。

第3段階=反ファシスト勢力が大都市で政権を獲得する。必要な場合、ロシア軍が支援する。2月末から3月初めまで。

第4段階=新しい権力機関の創設。まず大都市で行い、次にすべての行政単位で実施。3月初めまで。

第5段階=国民の願望を反映した平和的国家機関を再建する政治プロセスの開始。数カ月かかる。

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