ロシアへの制裁が始まれば潤うのは中国
もう一つ指摘したいのは、アメリカが段階的にロシアに科す予定の金融制裁に関してだ。例えば、アメリカがSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアを締め出し、アメリカドル決済を禁止したらどうなるか。そうなると、ロシアは自国の経済を、かなりの部分、中国に頼らざるを得なくなる。
中国は今年を「デジタル人民元元年」と定めていて、周辺諸国との貿易を人民元決済にし、近未来にデジタル人民元決済のシステムを整備しようとしている。アメリカによるロシアへの金融制裁は、結果としてこの動きを加速させることになるだろう。
他にもEU圏も、ロシアとの対立によって、コロナ禍に輪をかけた景気の後退が予想される。そうなると、やはり経済は中国との貿易頼みということになってくる。例えば、ドイツ車は昨年、中国で448万9384台も売っているのだ。これはヨーロッパ30カ国でのドイツ車の販売台数448万1453台を、わずかながら上回っている。
いずれにしても、米ロの対立の中で、漁夫の利を得るのは中国ということになる。少なくとも短期的には、アメリカによる中国叩きも弱まることになるだろう。北京では、「分久必合」(久しく分かれれば必ず合う)という言葉も飛び交い始めている。