いまの米国に「ウクライナ」と「北朝鮮」の両面作戦を展開するパワーなし

 北朝鮮は、来たる4月11日に金正恩(キム・ジョンウン)政権が正式に発足して10年を迎え、4月15日には金日成(キム・イルソン)主席生誕110周年を迎える。周知のように、金正恩政権は今年に入って、完全に強硬路線に逆戻りしており、1月には7回もミサイル発射実験を行った。

 北朝鮮は、中国から強く要請されて、北京オリンピック期間中(2月4日~20日)のミサイル発射実験を控えた。だが、4月中旬の二つのビッグイベントに向けて、派手な実験を再開する可能性は高い。ジョー・バイデン政権としては、中国の力で、それを何とか食い止めてほしいというわけだ。

 では中国は、北朝鮮を説得する見返りに、何を要求したのか? 新華社通信は、「アメリカは、北朝鮮の正当で合理的な懸念を重視し、実質的に意義ある行動を取るべきだ」と王毅外相が述べたと記している。

 これはおそらく、2017年に国連が科した強烈な北朝鮮への経済制裁、およびアメリカが独自に行っている経済制裁の一部もしくは全部を、解除してほしいということだろう。これまでバイデン政権は、バラク・オバマ政権の「戦略的忍耐」(北朝鮮無視)の戦略を継承してきたが、今後は軟化していく可能性がある。何と言ってもいまのアメリカは、ウクライナと北朝鮮という「両面作戦」を展開する余裕はないのだ。

 他にも、アメリカはイランを相手にしている余裕もなくなった。そのため、これまで難航していたイラン核合意の再構築問題は、電光石火に解決する兆しが見えてきた。米紙『ウォールストリートジャーナル』(2月22日付)は、「イラン核合意、数日内にまとまる可能性」と題した記事を掲載している。