2年近く続いている新型コロナとの闘いは、北朝鮮も例外ではない。防疫体制の崩壊が体制崩壊につながりかねない状況下、世界との断絶を宣言した北朝鮮だが、残念なことに、平壌でクラスターが発生した。出前でコロナが広がったという。どういう出前だったのか。
(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」
(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)
平壌市中区域の蒼光洞(チャングァンドン)に、在日帰国者が住むマンションがある。8階建ての古いマンションで、ワンフロアに1世帯、朝鮮総連商工人出身の帰国者8世帯が暮らしている。
それぞれの部屋は平均60坪ほどで、北朝鮮政府に多額の寄付をした「大金持ち帰国者」のために建設されたマンションだ。
そのマンションには、対北朝鮮制裁が始まる前まで「トントン商人」が頻繁に出入りしていた。家のドアをトントンと叩くことから名付けられた、訪問販売者たちである。
羽振りのいい在日帰国者は北朝鮮の高額消費の中心だったが、対北朝鮮制裁が始まると、日本の親戚たちから送られる円や物品が減少し、日本からの送金で生活していた帰国者も、さすがに商売をせざるを得なくなった。
このマンションに住んでいたパク氏も、7年前から商売を始めた。 日本人の母親から学んだ日本式うどんの販売だ。「かけうどん」と「ぶっかけうどん」で、北朝鮮の人々は「ジャッキうどん」と呼んでいる。在日朝鮮人を指す「ジャッキ」と「うどん」を合わせた呼び名である。
茹でた麺を冷水ですすいで温かいつゆをかけた「かけうどん」は北朝鮮の富裕層が好む典型的な日本式うどんである。「ぶっかけうどん」も茹でた麺を冷水ですすいで、醤油で味を付け、大根、生姜、ネギなどを入れて混ぜる日本式のうどんで、北朝鮮のグルメに好まれている。
パク氏は2種類の日本式うどんを、出前料込みで、1杯1万5000北朝鮮ウォン(約1900円)で販売した。材料はパク氏の家から700メートルほど離れたところにある「楽園百貨店」で仕入れていた。ここは日本や中国の製品を扱っている高級百貨店で、日本式うどんの材料が揃っている。