2021年1月6日に起きた米議会占拠(写真:AP/アフロ)

 今年は中間選挙の年である。選挙の勝敗は、2021年8月のアフガニスタン撤退から低下し続けている支持率をバイデン政権が再浮上させられるかどうかにかかっている。その第一歩は、トランプ前大統領の支持者による1年前の米議会占拠を、バイデン政権が「暴動・襲撃・反乱」として国民の記憶の中に明確に残せるのかだ。

 少なくとも、共和党陣営の多くは、米議会占拠を「民主主義の発露」だと主張することで、バイデン陣営の思惑を打ち砕こうとしている。

 共和党としては、米議会占拠を日本のメディアが使うような「米議会襲撃事件」と総括されることを回避できるならば、喉元に刺さっている棘を抜くことができる。そうなれば、党内を再びトランプ色でまとめ、上下両院での過半数奪回という流れが見えてくる。

 また、中間選挙の勝敗を決めるもう一つのポイントとして、無党派層に影響を与える大手メディア、中でも新聞以上に影響を持つと言われるようになったテレビがどのように報道していくのかという点が挙げられる。

 本稿執筆時点(1月9日)において明確になってきたのは、バイデン政権と議会民主党が米議会占拠の1周年である1月6日をうまく生かせなかったということ、そしてCNNなどケーブルテレビが視聴者離れを止められないという現実である。

米議会占拠事件は政治問題化しただけで終了?

 1月6日、バイデン大統領とハリス副大統領は米議会占拠に関する演説を行った。二人がともに同じ場所(ワシントン)で、同じ事案のスピーチをする最初の機会でもあった。昨年(2021年)1月6日に起きたことについては、英BBCがその概要を短くまとめているので、必要に応じてご覧いただきたい

【参考記事】
米議会襲撃から1年……何が起き、何が残されたのか(https://www.bbc.com/japanese/video-59919246)

 二人のスピーチに対する全米の注目点は、米議会占拠事件の追悼や「統一(unify)」という慣れ親しんだ言葉の繰り返しではなく、ハリス副大統領が漏らした言葉だった。「2021年1月6日は、1941年12月7日(真珠湾攻撃)、2001年9月11日(9・11テロ)と並んで記憶される」という旨の発言である。この言葉は、「いずれも米国の民主主義に対する反乱(または反発)」という意味で受け止められた。

 早速、9・11テロの犠牲者の家族などから、この3つを比較するのは大間違いだとの非難がソーシャルメディアで上がった。これに対して、サキ報道官は「三者の違いを分析するのではなく、いずれも民主主義への脅威であり、それを取り除こうとしている現在のことだと理解してほしい」と弁明した。

 ただ、サキ報道官の弁明は余りにも小手先の対応だったため、「米議会占拠事件を政治利用している」という共和党議員の批判が相次ぐことになった。逆に、火に油を注ぐ結果である。

 確かに、1月6日の事件では警官が1人死亡したが、もともとが米国人を殺すことを前提とした動きではない(警官もデモ隊の中にいた女性を射殺している)。また、日本帝国海軍による真珠湾攻撃と国際テロ組織アルカイダによる9・11テロは「闇討ち」という卑怯な行為であった上に、大量殺戮(真珠湾攻撃では2300人死亡、9・11テロでは3000人死亡)を意識した行為だったと現在の米国人は理解している(子供は違うので、ここは別途説明する)。

 正副大統領は1月6日のスピーチで、「トランプ陣営の復活は民主主義の脅威であり、米国の分断を深める」という点を押し出したが、結局のところ、米国民の心には届かなかった。今年1年の選挙戦を出だしとしては失敗だったということになろう。