パイパスの完成に伴い、函嶺洞門は通行止めとなった。ただ、歴史的にも重要な土木遺産として、その翌年の2015年(平成27年)に、国の重要文化財に指定された。

 これにより、2015年の箱根駅伝から選手も新しいバイパスを走るようになったのだ。コースが20m長くなったので、2014年以前の記録は参考記録扱いとなってしまったが、チェックポイントの場所と呼び名「函嶺洞門」はその後も引き継がれている。

現在は立ち入りできない状態に

 通行止めとなった函嶺洞門はその後どうなっただろうか。次の写真は昨年(2021年)11月に、現地で撮影したものだ。バイパスは車の往来が絶え間なく続き、函嶺洞門の存在など気づかぬように車は通り過ぎていた。

小田原側から函嶺洞門に向かうと、バイパスは右に曲がり早川を渡る。車道幅は7.25mに広がった

 函嶺洞門へ続いていた道路周辺は網のフェンスで囲まれていて、中に立ち入ることはできない。人も車も通らなくなった道路は、舗装を突き抜けて背の高い雑草が生えていた。

フェンス越しに函嶺洞門の小田原側を撮影

 通行止めになった函嶺洞門は今後どうなるのだろうか。固定式のフェンスが設置されているところを見ると、遊歩道などとして通れるようにする計画はなさそうだ。とすると、定期的なメンテナンスをしていく見込みも少ない。

 重要文化財に指定されていることから、壊して撤去することも当分はないのではないか。だがこのまま放置されると、草木が伸びてさらに覆われていくし、崩落する可能性もあり、“廃墟”となっていくことは避けられないだろう。

 古い建造物も定期的なメンテナンスがされなければ、やがて朽ちて崩れていく。歴史的建造物の保存管理に向けて、何らかの手当てがなされてほしいと思う。

【2024年1月2日追記】
函嶺洞門は2024年1月2日から8日まで、一般公開されることになった。詳しくはこちら。
箱根駅伝5区が通らなくなった函嶺洞門、1月2日から1週間だけ公開
また、公開初日に訪れた現地のようすはこちら。
箱根駅伝選手たちだけが味わえた函嶺洞門、10年の眠りから覚め人々が行き交う