中国は米国などの北京五輪「外交ボイコット」への対抗措置を示唆している。写真は中国外務省の趙立堅報道官。11月19日撮影のもの(写真:AP/アフロ)

 キナ臭いムードが高まってきた。開幕まで2カ月先に迫った2022北京冬季五輪に高官を含めた政府使節団を送らないとする「外交ボイコット」を米国、英国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国が表明。新疆ウイグル自治区とチベット、香港での人権弾圧に加え、軍事的緊張が高まる台湾海峡の問題、さらには中国の女子プロテニス選手・彭帥さんが政府高官から性的暴行を受けていたと告発して以降、忽然と消息不明になった一件などへの強い抗議の意思を示す対抗措置だ。

 人権重視路線を貫く他の欧州諸国も追随する可能性が高まっており、一部メディアによれば同盟国・日本も水面下で北京冬季五輪への閣僚の派遣を見送る方向で検討し始めていると報じられている。

外交ボイコットに選手が神経を尖らせる理由

 今月12日には日本の「外交ボイコット」を推進する市民団体が東京都内において大規模な集会デモを実施するとの情報もある。それどころか西側諸国の間からは北京五輪への選手団の派遣も辞するべきとの声も上がり始めており、その強硬論は日本にも飛び火しそうな雲行きだ。

 こうした状況に神経を尖らせているのが、北京五輪で「主役」となるはずのアスリートたちである。コロナ禍で開催の是非を問われ続けられながら強行開催された東京五輪とは大きく異なり、それから半年が経過して行われる北京五輪はおそらく無風のまま来年2月の開幕を迎えることができるに違いない――。早々に北京五輪代表の座をつかみ取った日本代表の面々たちはほぼ誰もが、そのように楽観視していたはずだ。

 ところが、ここ最近になって米バイデン政権が急激なシフトチェンジで対中政策を一層硬化させる「外交ボイコット」を打ち出したことで、北京五輪を巡る日本代表たちも一転して非常に難しい立場へと追いやられることになった。

 仮に一部報道の通り、日本も「外交ボイコット」を決定した場合は、北京五輪に政府閣僚ではないスポーツ庁の室伏広治長官やJOC(日本オリンピック委員会)の山下泰裕会長を派遣する代役案が浮上しているという。

 一方で中国政府は今年7月の東京五輪開会式に苟仲文国家体育総局長を出席させている。本来ならば外交上の「返礼」として北京五輪には政府内で同等の地位にある閣僚級を出席させることが筋だ。