(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 足元の米WTI原油先物価格は1バレル=70ドル台前半で推移している。10月下旬から15ドル近く下げたが、下落の主な要因は新型コロナ感染の再拡大と米国主導の国家備蓄原油の放出だった。

 バイデン米大統領は11月23日、戦略石油備蓄(SPR)から5000万バレル分の原油を放出することを決定した。日本、インド、英国も米国と協調して備蓄原油を放出することを表明している(日本が約420万バレル、インドが500万バレル、英国が150万バレル)。

 発表翌日(24日)の米WTI原油価格が1バレル=78ドル台に上昇したことから、「備蓄原油放出の効果はなかった」との論調が一般的だ。だが「米国政府がSPRを放出する」との観測が流れたことで、原油価格は10月下旬の85ドル台から下落に転じていた。放出発表前日は75ドル台まで低下しており、「SPR放出による価格抑制の効果は一定程度あった」と筆者は考えている。

国家備蓄原油放出の前例が作られた意義

 備蓄原油放出のインパクトは、供給側のOPECプラスにも及んでいる。