インド・カシミール地方の中印国境地帯に向かうインド軍兵士(資料写真、2020年9月7日、写真:ZUMA Press/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

「中国がインドの安全保障上の最大の脅威であるために、実効支配線(事実上の国境)の警備に配備されている数万人の軍隊が長期間、基地に戻ることができない。1年半近くも国境紛争が解決できないのは、中国との信頼関係の欠如がそもそもの原因だ」

 インドのラワット国防参謀長は11月11日に放映されたTVでインタビューでこのような懸念を表明した。

緊張状態が続く中、中国で「陸地国境法」成立

 インドと中国は1962年に大規模な国境紛争を起こしたが、その後も両国は3000km以上の未画定国境を抱え、実効支配線を挟んで対峙してきた。インドは現在も「北東部のアルナチャルプラデシュ州と北西部カシミール地域を中国が不法占拠している」として武力衝突も辞さない構えだ。

 中印両軍は昨年(2020年)6月、インド北部のカシミール地域東部に位置するラダック地方の国境地帯の渓谷沿いで衝突し、45年ぶりに双方で死者を出した。両軍はその後もヒマラヤ山脈の国境地帯でにらみ合いを続けていたが、今年2月にようやく軍の一部撤退が決まった。