「令和3年度 富士総合火力演習」に参加中の陸上自衛隊員(資料写真、2021年5月22日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 自民党は、防衛費をGDP比2%に引き上げる倍増案を方針として掲げています。

 2%という数字は、2020年に米トランプ政権のエスパー米国防長官が、日本を含む同盟国に「国防費をGDP比で少なくとも2%に増やしてほしい」と表明したことがベースになっていると思われます。このことをもって、即外圧だと非難する向きもありますが、アメリカとすれば、国防費の少ない同盟国は、安保にただ乗りする寄生虫のようにも見えているかもしれません。

 国防長官という政治のレベルでは2%という数字で語られますが、この数字が某大臣のように「おぼろげながら浮かんできた」などということはないはずです。国防総省内で同盟各国の戦力を分析し、必要かつ可能だと結論づけられていたのでしょう。ただしその分析は公開されていません(そんなものを公開したら内政干渉だと騒ぐ人もいるでしょう)。

 この防衛費倍増案に反対するメディアの中には、装備費を引き上げただけではムダ使いのオンパレードになる上、現在でも隊員の充足に苦労しているように、定員増を図ることも容易ではないとして、倍増は不可能だと非難する声も聞かれます。

 しかし、筆者としては可能だと考えていますし、当然必要だとみています。以下では、防衛費増額の相当部分を必要とするであろう自衛隊の不足機能について考えてみたいと思います。

 さて、本論に入る前に、クイズを出しておきます。超基本的なクイズですが、自衛官でも結構な確率で間違えるクイズです。

 自衛隊の任務は何でしょう?

 答えは、自衛隊に不足している機能に関係しています。

自衛隊に不足する「ホームランド・ディフェンス」能力

 米軍関係者が自衛隊の能力を評価すると、総じて高い評価を与えてくれますが、一部の能力に関しては極めて低評価となります。その1つが、敵基地攻撃能力です。これを増強するためにも防衛費の増額が必要になりますが、この記事では別の能力について注目したいと思います。