過激ツイートは本国へのアピールが目的か
一方の薛氏は1968年7月、江蘇省淮安市漣水県生まれ。北京外国語学院日本学部で学び、外交部(中国外務省)へ。駐日大使館公使参事官や外交部アジア局参事官など歴任し、2019年からアジア局副局長を務めた。
薛氏の前任の駐大阪総領事は2020年2月に着任したものの、1年もたたないうちに本国に帰国したまま音信を絶ったため、在阪華僑らの証言をもとに“粛清人事”の疑いが濃厚であることを筆者は先駆けて報じたが*2、薛氏は、前任者の長い空席のあと、今年6月に着任したばかり。
*2 大使の「台湾のWHO参加容認」発言翻す中国の迷走
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60026
駐大阪中国総領事館は、近畿、中国、四国など2府12県を管轄し、欧州の小国ほどの経済力にも比肩し得るエリアのため、日本では東京の駐日大使館に次ぐ規模を誇る在外公館で、総領事も大使級とされる重要な在外公館だ。一時は勝負がついたかに見えた楊氏との大使ポスト争いが、この人事で薛氏は再び「勝負になる」と見込んだのだろうか。
孔氏と薛氏の正反対のツイッター発信が前後して行われていた10月27日は、来年2月4日の北京五輪開幕の100日前にあたり、在日のウイグルや南モンゴル、香港の人権活動家ら約20人が人権弾圧下の北京冬季五輪の開催に反対し、東京都内で抗議集会を行った。
日本に拠点を置く香港の民主化運動の活動家らは、日本ウイグル協会や世界モンゴル人連盟などのメンバーらとともに、香港や新疆ウイグル自治区などにおいて中国当局による人権侵害や弾圧が改善されない限り、日本政府は首脳や要人らの派遣を見送る「外交的ボイコット」を実施すべきだと訴え、港区の中国大使館前で、中国政府に人権状況を確認する国際調査団の受け入れなどを求める声明文を読み上げたが、メンバーらは薛氏が国際人権団体を「害虫」と揶揄したことについても「中国政府の人権感覚を、忠誠心競争に我を忘れた外交官がはからずも体現しているとしか思えない。恥ずかしい」と肩を落としている。