また、これとは別に、ラジオ・フランス・インターナショナルが報じた、台湾の外交部長(外相)の「我々は軟弱姿勢が侵略を招くと信じている」とする発言に関しては、「台湾独立=戦争。はっきり言っておく!中国には妥協の余地ゼロ!!!」と噛みついている。
東京の中国大使とは正反対の「戦狼」ぶり
このように罵倒や嘲笑、過激発言のオンパレードの薛氏のツイートを見て、薛氏をよく知る日本の外交官の中からは「もう狼戦士の時代でもないのに」「以前はこんな発言をするようなイメージの人物ではなかった」「忠誠心競争に毒されてしまったのか」と呆れ果てたかのような感想が百出。
SNS発信を「『和を以て貴しと為す』との理念」に基づいて行うとする東京の孔氏との隔たりの大きさに、「駐日中国公館内部の連携が全くとれていないかのようだ」との見方が浮上しているが、それを裏付けるかのように、中国公館の内情に詳しい関係者らからは「薛氏の度を越した過激発言の背景には出世競争が存在する」との指摘も出ている。
「薛氏のライバルは駐日大使館で公使を務める楊宇氏。孔鉉佑大使は実質お飾りで、その影響力は薄く、事実上の大使館の実権は番頭格の楊宇氏が握っているというのが大方の見方。そんな中で、次期大使のイスをめぐって、大阪の薛氏は、戦狼外交を展開する本国に存在をアピールするために過激発言を繰り出しており、逆に楊氏はこれを抑えるかのように孔大使の『友好姿勢』のSNS発信を演出している」というのだ。
大使の孔氏については、2020年3月、新型コロナウイルスの蔓延に際し、世界保健機関(WHO)総会への台湾のオブザーバー参加の可能性について、筆者のインタビューに、いったんは「その方向で検討している」と回答したものの、その後本国からの叱責があったのか、態度を一変させて否定。取材自体が「なかった」とする仰天対応を見せたことは本誌既報の通りだが、こうしたことが原因となったのか、その後の大使館内での実権は小さくなり、楊氏が事実上の実権を握ったとされる。