さて、原発が何なのか知っていても知らなくても、私達のこれからの生活が国のエネルギー政策によって支えられるのは確かだ。
7月に発表されたエネルギー基本計画の原案では2030年度までにCO2の排出量46%削減、再生可能エネルギーと原発で発電量の6割を賄う、という目標が示された。
しかし、一方で政府は「原発への依存度を可能な限り低減させる」という方針も引き続き示している為、今のところ原発の新設は検討されていない。とりあえずは運転開始から40年を超えた原発の再稼働で切り抜けるしかないようだ。
それにしても、かって原子力が夢のエネルギーと謳われた時代、原発政策は政治家や企業の利権の温床だった。原発立地の村の人々もある意味ではその巻き添えを食ったのだろう。
里山の景観を破壊するソーラーパネル
巻き添えという事では国が盛んに推進した太陽光発電の事業でも困惑している人達がいる。
その取材は2014年に“北杜市の景観を破壊するソ―ラーパネル”という小さな新聞記事を目にした事から始まった。
実際に小淵沢の現地に行って見た光景は想像を絶するものだった。住宅の目の前をソーラーパネルが埋めつくしている。住人の渡部義明さんに話を聞いた。渡部さんは7年前に鎌倉からこの地に移り住んだという。
「僕は小淵沢を見て歩き、一目でこの土地が気に入りました。雄大な八ヶ岳や甲斐駒ケ岳を眺めながら暮らそうと、ここに移り住んだのです。家が完成した時は終のすみかを見つけたと思いました。四季の変化と鳥の声は心地いいものでした。ところが一年前、突然、家の前の畑一面にソーラーパネルが置かれたんです。何の知らせも無くですよ。驚くやら何やらで、今は絶望しかありません」
無理もない。ベランダから外を眺めると視野の大半はソーラーパネルなのだ。特に朝はパネルに反射した太陽の光がギラギラと眼を刺すらしい。渡部さんはパネル撤去の訴訟を起したが、設置に対する何の法的規制も事前届け出制度もなかった為、勝訴は難しいようだ。