「環境のためだ、休耕地を売ってくれ」

 道の向こうの畑でネギの収穫をしていた老女からソーラーパネル設置の顛末を聞いた。

「この畑もソーラー業者に売る事にした。息子一家は東京に住んでいて農業を継ぐ気はないので、私一代限り。税金の事やらあるし、私が死んだらどうしようかと思っていたら業者が買い上げてくれた」

 北杜市の景観破壊を憂慮する市民グループの一人の中山さん(仮名)が横で教えてくれた。

「こんなケースが多いんですよ。業者は休耕地や山林の所有者を探して『爺ちゃん婆ちゃん! この土地売ってほしい。お日様がくれる環境に優しい贈り物のためだ』と言って土地を買い漁る。北杜市にはどれくらいのソーラー畑があると思います? 1100カ所ですよ。まだこれから4500カ所以上増やすらしいです。お日様だって苦笑してますよ」

 さらに北杜市内を巡った。山裾の緩やかな坂道を登ると、別荘風のモダンな住宅が数軒並んでいた。その前の斜面にも巨大なソーラー畑が拡がっていた。

(写真:橋本 昇)
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 ここの住民にも話を聞いた。

「ここは日当たりも良く、なだらかな斜面で、見ての通り住み心地が良さそうでしょう? それもあれがなければの話ですがね。もうあのパネルのお化けを見ていると頭が変になりそうですよ。市にどうにかしてくれと相談しても、ソーラーパネルは建築審査はいらない。建築基準法でも条例でも取り締まれないと知らんふりですよ」

 全国でも日照時間の長い山梨県は太陽光発電に適した環境だと言える。そこに目をつけた業者が土地を買い漁り事業を拡大を目論む。特に震災後、国の電力の固定価格買い取り制度ができてから、業者によるソーラーパネルの設置が急増した。