JR東日本が2021年7月から、駅構内の一般通行客の顔をチェックし、刑務所からの出所者と、仮出所者の一部を検知していることが読売新聞で報道(https://www.yomiuri.co.jp/national/20210920-OYT1T50265/)されました。
読売の記事は、それなりに多角的に検討されており、良くできていると思います。9月21日、今度は朝日新聞から「顔認識取りやめ」の続報(https://digital.asahi.com/articles/ASP9P64GLP9PUTIL02D.html)がありました。
朝日は、本稿でのちに触れる大阪駅の事例なども引きながら、顔認証をめぐるより一般的な問題にも踏み込んでいます。
しかし、いずれも報道は基本的に「文系的」な観点でのみ、記されており、ど真ん中の問題を見過ごしているのがいけません。
つまり、この問題にはテクノロジーサイドからも、様々に問題含みなのですが、そうしたことには一切触れていないように見える。面倒がありそうだから「取りやめた」だけで済む話ではありません。
ポイントは2つあります。
第1は、駅構内を通行する、基本「すべての人」の顔がデジタル・コンピューター・ビジョンでスキャンされ、チェックされる、そのスタートラインから話を始めべきであること。
第2は、顔認証は結構ですが、現下のコロナ対策、マスクなど装着してしまうと、何百億円かけたシステムか分かりませんが、無用の長物と化すリスクがあるという、間の抜けた話です。
顔のチェックだけでは、月光仮面や鞍馬天狗が謎の人であるように、判別不可能になってしまう。
「オリパラテロ対策」でかいくぐった世論
東京オリンピックに先立つ7月6日、JR東日本は「オリパラのテロ対策」として顔認識カメラの導入を発表していました。
JR側は「不審人物や不審な荷物、指名手配中の容疑者の検知を行う」と説明する一方、「出所者と仮出所者を検知対象に含む」ことは明らかにせず、五輪開会式直前の7月19日から運用を開始していたといいます。
実際には主要110駅や変電所などにネットワーク化されたカメラ、合計8350台を設置し、映った人の顔情報をチェック、登録された怪しい人物などとの照合を取るという。なかなか大がかりな代物です。
JR東日本・関係者は「検知の対象」を
〈1〉過去にJR東の駅構内などで重大犯罪を犯し、服役した人(出所者ならびに仮出所者を含む)
〈2〉指名手配中の容疑者
〈3〉うろつくなどの不審な行動を取った人、と説明しています。
この3番目は微妙で「うろつく」が曲者です。そもそも定義がありません。