(3R)保健連携協定(保健医療版TPP)を締結せよ

 リダンダンシー・アプローチとして、多国間の「保健連携協定」(保健医療版TPP)の締結を目指すべきである。

 今回のような大規模なパンデミック発生時には、情報収集や分析、ワクチン開発や治療薬開発はもちろん、その承認や製造、供給も到底1カ国のみで行えるものではない。一方で、良い悪いはともかくWHO(世界保健機関)自身も国際政治の舞台であり、必ずしも有効に機能するとは限らない。

 そこで、我が国がリーダシップを取って米英等複数国との多国間保健連携協定を締結し、事務本部を東京に設置できるよう国際協調を進めるべきである。WTO(世界貿易機関)とともにTPP(環太平洋経済連携協定)を推進するのと同じ枠組みである。大規模なパンデミック発生時には保健連携協定事務本部がWHOの代替補完機能を担当することもできよう。

 今回のワクチンについては、国際共同治験が実施されたが、それでも我が国の承認は一歩遅れることとなった。このような遅れが生じないよう、締結国間において保健医療に関する規制調和を我が国が先導し、国際治験制度を推進することも求められる。さらに、このような連携協定の枠組みの中で、医療技術水準やその価値観をほぼ同じくする日米英による国際共同保健医療研究機関を国内に設置し、国際共同研究を推進していくことも求められよう。

「次のパンデミック」に備えて

 これまで議論してきたように、我が国の医療制度は、「厚生ムラ」の独占構造の下にあり、極めて脆弱である。それでも感染者数や死亡者数が抑えられているのは、医療従事者の志の高さによるものであり、また国民一人ひとりの意識の高さによるものであろう。この点については心からの敬意を表したい。それでもこのような志に頼った対応は限界に達しつつあり、到底、次のパンデミックを乗り越えられない。次のパンデミックは明日にも私たちの社会を襲うかもしれない。いつ来るともわからない次のパンデミックに備えるためには、医療システム自体を強靭にしていかなければならない。COVID-19で医療崩壊を招いた元凶である「厚生ムラ」の独占構造を直ちに解体しなければならないのだ。