ニューノーマルとリダンダンシー:「厚生ムラ」解体の2つのアプローチ

 この「厚生ムラ」の解体こそ、強靭な医療システム構築に不可欠であり、次のパンデミックに備えた最大の政策課題だと言えよう。ではどのように、この「厚生ムラ」を解体するか。我々は、2つのアプローチを提案したい。

 ひとつはニューノーマル・アプローチである。独占構造に守られた「厚生ムラ」は改革や変化を拒み続けてきている。結果として、医療システムが時代遅れとなっている。そこで、システムを最新化することで、強靭な医療を構築することができる。

 もうひとつはリダンダンシー・アプローチである。リダンダンシーとは「冗長性」とも訳されるが、一つの系統が故障したとしても別の系統を予め組み込んでおくことで、緊急時を乗り越えようとする考え方である。アポロ計画のコンピュータシステムで組み込まれた考え方であり、現在では航空機や鉄道車両の設計でも用いられている緊急時対応の基本的な考え方である。医療においてもシステムを多層化することで、独占構造を解体し、強靭な医療を構築することができる。

「厚生ムラ」を解体する6つの具体策

 では、具体的にどのような医療制度改革が必要なのか。ここでは3つのテーマについて、それぞれにニューノーマル・アプローチ(N)とリダンダンシー・アプローチ(R)を検討し、以下に示す合計6つの具体策を提案したい。

【強靭な医療供給】
・ニューノーマル:オンライン診療制度恒久化を着実に実施せよ
・リダンダンシー:看護診療師(日本版ナースプラクティショナー)を制度化せよ

【強靭な保健行政】
・ニューノーマル:保健庁(日本版CDC)を設置せよ
・リダンダンシー:広域連合立保健大学を設立せよ

【強靭な医療研究】
・ニューノーマル:総合科学庁を設立せよ
・リダンダンシー:保健連携協定(保健医療版TPP)を締結せよ