前任者の“粛清”後に就任した薛剣氏

 しかし、この薛氏の着任は通常の人事ではなかった。“粛清人事”とみられる前任総領事の長期不在の末に行われた異例の人事だった。

 その前任者とは何振良(かしんりょう)氏(54)。

 駐大阪総領事館公表の経歴表などによると、何氏は1967年11月生まれ。法学修士。駐日大使館勤務をはじめ、北京の外交部アジア局日本遺棄化学兵器問題処理弁公室の役職などを経て、2016年から19年まで駐福岡総領事を務め、20年2月、李天然(りてんねん)氏の後任として駐大阪総領事に着任した。ところがその年の秋ごろに一時帰国したまま任地大阪に戻らず、12月からは、女性副総領事の張玉萍(ちょうぎょくへい)氏が「代理総領事」の肩書で対外業務をこなすようになった。そのため、在阪の華僑・華人らの間では「着任1年未満の総領事が何のあいさつもなく長期不在となり、総領事館からも説明がないのは不可解」だとして一時は騒然となったほどだ。

 “粛清”されたとみられる何振良・前駐大阪中国総領事(同総領事館ホームページより)

 在阪華僑らによると、何氏は、かつて駐日大使(2004年9月~2007年9月)を経験し、知日派として知られる王毅国務委員兼外相に近い人物だという。その王毅氏が2020年11月24~25日に来日し、茂木敏充外相との日中外相会談に臨んだが、そのタイミングで何氏が姿を消したこともあり、「権力闘争などに巻き込まれて当局に身柄を拘束された」との憶測も浮上。