薛氏は、2001年9月11日の米同時多発テロを発端とする20年にわたる米軍のアフガニスタンへの関与、駐留を批判したかったものとみられるが、しかし、現役の外交官が実名を出し、人命に関わる出来事をマンガのようなイラストを添えて揶揄するのは異例だ。このツイートに対しては、「外交官としてあり得ない」「対外的に強硬な習近平指導部の戦狼外交姿勢の表れ」「こういう人権感覚こそが中国当局による新疆ウイグル自治区でのウイグル族弾圧につながっているのではないか」などとする批判や抗議が噴出。

 同ツイートに対して、1989年の天安門事件で、民主化を求めた学生らが中国当局に武力で鎮圧された際、人民解放軍の戦車の前に男性が立ちはだかった写真画像を張り付けて返信する人や、同じような2機の航空機を配したイラストで、中国の国旗をつけた航空機が新型コロナウイルスらしきものを投下する後から、台湾の「青天白日満地紅旗」をつけた航空機が医療用物資らしき赤十字マーク入りの箱を投下する様子を表現した絵を返信する人もいた。

薛剣総領事のツイートに対する批判的な返信

日本に向けては「ほっこりツイート」も

 薛氏は他のツイートでも、米国に対しては民主政治を「腐敗」「金まみれ」と攻撃し、コロナ対策を批判するなど厳しい姿勢が目立つ。その一方で、日本との関係については、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドのジャイアントパンダの誕生日を祝福するなど、柔らかな内容のツイートが多く、日中の友好関係重視の姿勢を強調。あたかも日米の同盟関係を揺さぶるかのような印象を与えている。

 同総領事館ホームページなどによると、薛氏は1968年7月、江蘇省淮安市漣水県生まれ。北京外国語学院日本学部で学び、外交部(外務省)へ。駐日大使館公使参事官や外交部アジア局参事官など歴任し、2019年からアジア局副局長を務めた。

 駐大阪中国総領事館は、近畿、中国、四国など2府12県を管轄し、欧州の小国ほどの経済力にも比肩し得るエリアのため、日本では東京の駐日大使館に次ぐ規模を誇る在外公館で、総領事も大使級とされる重要な中国の在外公館だ。

異例のトップ交代が繰り広げられた駐大阪中国総領事館=大阪市西区靱本町(吉村剛史 撮影)