ICOのバッハ会長と会談する菅首相。五輪後、コロナの感染拡大が続いている(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。

 その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。今回は感染拡大に伴うロックダウンについて。専門家や知事会からロックダウンやそれに準じる措置を求める声が上がっているが、それをどう考えるべきだろうか。

◎過去分は以下をご覧ください
https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=NFI&page=1

(森田朗:NFI研究所理事長)

 全国的な感染者の増加が止まる気配は見えず、専門家や知事会からロックダウンをすべきだ、あるいはそれを可能にする法整備を議論すべきだという声が聞こえ始めた。

 報道によれば、菅首相は「私権制限を伴うことに加え、感染の完全な封じ込めは不可能」として消極的だという。田村厚労大臣も、「外出の制限をする法律は、国民の理解をいただかないと難しい」と述べ、行動制限の法制化に慎重だ(読売新聞8月19日)。

挙国一致内閣や緊急立法も検討すべき時

 いったい政府は、国難とも言うべき現在に至っても、ワクチン以外に打つ手はなく、このまま感染の拡大と医療崩壊を傍観するしかないとでもいうのか。国民の生命と財産を守るのが政府の役割だとすれば、少しでも感染を抑える方法を講じるべきではないのか。

 この際、野党は政府を批判するばかりでなく、与党と共に挙国一致内閣を作り、必要ならば臨時国会を開いて緊急立法を行うべきではないのか。

 そもそも、ロックダウンとはどのようなことか。人によってイメージは大きく異なっている。中には、外出が一切禁止され、許可を得ずに街に出ると自動小銃を持った警察官に誰何(すいか)され、許可証がないと自宅に帰るよう強制され、あるいは警察に連行されて罰金を取られたり、最悪の場合勾留されたりすると思っている人もいる。

 まさに、軍事独裁政権による戒厳令下の都市封鎖を連想させるが、いくらロックダウンと呼ばれる規制が行われても、わが国でそこまで厳しい制限を課すことは考えられない。ロックダウンという言葉が一人歩きし、さまざまなとらえ方がされ、それが議論を混乱させている面がある。特に、コロナ感染症が最初に発生した中国武漢のあのイメージが強く印象に残っているのだろう。

【参考記事】
「緊急事態宣言」はもう効かない、より強力な私権制限に踏み切れ
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65481