「敵対階級」に分類された申誠

 申誠は、「金日成が人民を獣みたいに弾圧している。脱北しようと思っている」と話した。北朝鮮でこのようなことを言えば、政治犯となり、死を意味する。命を預けられるほどの親しい間柄でない限り、交わすことなどできない会話である。

 本来、北送在日同胞(帰国者)は「動揺対象」に階級が区分されるが、兄と弟が政治犯収容所に拘禁された申誠は「敵対階級」になった。職場でも、「危険分子」として一挙手一投足を監視される「監視対象者」である。彼にとって脱北は容易なことではなかったが、私はできるだけの手助けをしたいと考えた。(続く)

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