イランの新大統領、イブラヒム・ライシ氏(2021年8月8日、提供:Iranian Presidency/ZUMA Press/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格は8月中旬に入り、1バレル=60ドル台後半で推移している。

 世界最大の原油需要国である米国で新型コロナウイルス感染者数や死者数が増加しているとともに、世界第2位の中国でも感染拡大抑制に向けた移動制限措置などが再導入されており、世界の原油需要の回復が遅れるとの懸念が強まっている。両国でのワクチン接種率は50%を超えているが、パンデミック収束の目途は立っていない。

 原油価格は7月以降、乱高下している。

 OPECプラスの協議決裂のニュースを受けて、7月上旬は1バレル=77ドルと6年7カ月ぶりの高値となり、80ドル超えも視野に入っていた。しかし7月下旬には新型コロナウイルス感染拡大の懸念から2カ月ぶりに65ドル台に下落。その後70ドル台に戻したが、再び70ドル割れとなっている。

 パンデミック以降、世界の原油市場は「需要」が鍵を握る展開が続いている。「先進諸国でワクチン接種が進み、原油需要が順調に回復する」との期待が膨らんでいたが、新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)の世界的大流行が冷水を浴びせた形となっている。

回復基調に戻らない米国のシェールオイル生産

 原油需要を個別に見ていくと、米国の原油需要はコロナ禍以前の水準に順調に回復しているが、気になるのは中国の動向である。