中国政府の一連の動きにウォール街は落胆している(出所:Pixabay)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は8月20日、外国からの制裁に対抗する中国の「反外国制裁法」を香港に適用する採決を見送った。

 米国は「中国が『香港国家安全維持法』を使い、香港の反体制派を締め付けている」として、中国や香港の当局者を制裁対象に指定してきた。中国政府はそのことを受けて今年(2021年)6月に「反外国制裁法」を成立させ、対中制裁に関与した個人や組織に対するビザ発給拒否や中国国内の財産差し押さえなどの措置を導入した。

 この法律の適用を香港に広げる方針だったが、全人代常務委の決定が急遽先送りとなったのである。

 その背景には香港ビジネス界から懸念する声が出ていたことがある。

 米中の関係悪化にもかかわらず、欧米の大手金融機関は急成長する中国の「玄関口」である香港での活動に力を入れている。米モルガンスタンレーは過去1年で資産を70パーセント増加させ、米シティは今年人員を1700人増やすという。しかし同法が香港で適用されれば、外資系金融機関は米中の関係悪化の影響をもろに受ける可能性が出てくる。そうなる事態を回避するため、国際金融センターの香港から外資系金融機関がこぞって撤退するのではないかとの懸念が生じていたのである。