香港国安法違反で起訴され裁判所で尋問された香港の民主主義活動家たち(2021年3月2日、写真:AP/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 香港版国家安全維持法(香港国安法)違反で2021年1月に一斉逮捕された香港の民主派人士のうち47人が「国家政権転覆に関わった罪」で2月28日に起訴され、3月1日に初公判が行われた。短い休廷を挟みおよそ14時間連続の尋問が行われるマラソン裁判のため、被告の1人が倒れ病院に運ばれるという事態も発生した。

 彼らの身の安全と香港の未来が、今、中国共産党の俎上になすすべもなくのっている。

“予備選挙”への関与が「政権転覆に当たる」

 彼らは、昨年(2020年)の全人代(全国人民代表大会)で成立、施行された香港版国家政権転覆の第22条に違反したとの罪で起訴された。具体的には国家政権転覆の組織、計画、実施、参与した罪だ。

 起訴されたのは23歳から64歳までの男性39人と女性8人。香港大学法学部の元副教授で2014年の雨傘運動のきっかけとなった「オキュパイセントラル運動」の呼びかけ人でもあった戴耀廷(ベニー・タイ)や、元立法会議員で「長毛」のあだ名で知られる梁国雄(レオン・クオックホン)、東京大学大学院に所属している元立法会議員の区諾軒、ネットメディア「立場新聞」での果敢な報道で知られる元記者の何桂藍(グウィネス・ホー)、現職区議の張可森(サム・チャン)、岑敖暉(レスター・シュム)といった香港の著名な政治家、民主化活動家も含まれる。

 昨年7月11~12日に行われた“予備選挙”に関与したことが問題視された。これは2020年9月に予定されていた立法会選挙に出馬する民主派議員を選抜するための非公式選挙だ。結局この立法会選挙は、建前上は新型コロナを理由に今年秋に延期されたのだが、実施されていたら民主派が過半数議席を取れる公算があった。

 議席過半数を目指す民主派候補たちが自主的に組織し、票の食い合いを防ぎ当選率をあげるために、得票数の多い候補を絞り込む非公式の“予備選挙”。なんと有権者の13%にあたる61万人市民が、真夏の香港の投票所の前に長蛇の列をつくって投票行動に参加した。市民の多くが、立法会で民主派候補を応援しているということの現れだった。

 だが、この行為が、政権転覆に当たるとみなされた。中国と香港の言い分では、議会の過半数をとって予算案の可決など妨害しようとたくらむことが、政権転覆の画策、というわけだ。