中国で、3月5日に北京の人民大会堂で開幕する年に一度の国会、全国人民代表大会を前に、習近平主席が「締め付け」を強化している。
2月25日、同じ人民大会堂で、「全国脱貧困攻略総括表彰大会」を開催。7月に中国共産党創建100周年を控えた習近平政権が、100周年の「看板政策」にしていた「脱貧困」(貧困人口ゼロ)を達成したことを、内外に宣布する自画自賛イベントだった。そこで習主席は、1時間以上にわたって熱弁を振るい、「中国の歴代のどの政権も成し得なかった『脱貧困』を、社会主義のわが共産党政権が成し遂げた」と豪語した。
翌2月26日、習主席は中南海(最高幹部の職住地)で中央政治局会議を招集。ここでも長い演説をぶち、「中国の特色ある社会主義の偉大なる御旗を掲げて、全国人民代表大会で『第14次5カ年計画」(2021年~2025年)と『2035年までの遠景目標』を定めていく」と力説した。また、学校で「習近平思想」(習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想)を、広く教育していくことも、全国人民代表大会で決議することを説いた。
習近平主席は社会主義の信奉者で、ガチガチの社会主義国家を目指している。中国は、まるで毛沢東時代に逆戻りしていくかのようである。
習近平を中心とする「社会主義重視派」と李克強を中心とする「市場経済重視派」
だが、1992年から翌年にかけて、毛沢東時代の行き過ぎた社会主義を否定した鄧小平氏らは、「社会主義市場経済」を国是に定めた。社会主義を強め過ぎると経済が停滞するとして、経済分野は市場経済を伸ばしていくと決めたのだ。憲法第15条には、「国家は社会主義市場経済を実行する」と明記されている。
こうした鄧小平理論をいまに継承するのが、「団派」(中国共産主義青年団出身者)と呼ばれる系譜の政治家たちで、その筆頭は、序列ナンバー2の李克強首相である。2013年3月に、習近平国家主席・李克強首相体制が出帆して以降、毎年3月の全国人民代表大会が近くなると、習近平主席を中心とした「社会主義重視派」と、李克強首相を中心にした「市場経済重視派」の論争が起こってきた。