AIでドローンなどを制御して相手を攻撃するAI戦が世界の軍事技術の中心になりつつある

 7月11日に放送されたNHKスペシャル「AI戦争 果てなき恐怖」を見られた人は多かったのではないかと思います。そして、その内容に衝撃を受けた方々も多かったのではないでしょうか。

 それほどに、「AI戦争 果てなき恐怖」は衝撃的な番組でした。

 しかし、現代戦を研究する私にとっては、「AI戦争 果てなき恐怖」は問題が多い番組でしたので、その問題点を紹介しようと思います。

恐怖を駆り立てる意図が明白

 タイトルである「AI戦争 果てなき恐怖」が明確に示しているように、「AI戦争」と「果てなき恐怖」という表現で恐怖を煽っています。

 軍事の専門家は「戦争」という用語を簡単には使用しません。例えば、サイバー攻撃、サイバー戦(Cyber Warfare)という用語は使っても、「サイバー戦争(Cyber War)」という用語は使いません。

 なぜなら、サイバー攻撃をサイバー戦争というのは言い過ぎです。

 戦争(War)と戦(Warfare)を明確に使い分ける必要があります。

 戦争(War)は、第2次世界大戦(World War Ⅱ)のように、物理的な軍事力と軍事力が本格的に行使される戦いのことで、戦争(War)が起こっている期間を戦時といいます。

 一方、戦(Warfare)では、軍事的手段のみならず非軍事的な手段も活用され、平時にも実施されます。

 例えば、情報戦、サイバー戦、AI戦のように、物理的な軍事力ではなく、目に見えない戦いが展開されます。そして、戦時のみならず平時においてもサイバー戦やAI戦は多用されます。

 明らかに戦争(War)の方が膨大な犠牲者が出ますし、悲惨な結果になります。

 このように戦(Warfare)と戦争(War)は違います。戦争(War)という用語を何にでも使うべきではありません。