すでに2億人以上がフレキシブルワーカーに

「中国灵活用工市场研究报告」などの各種報告によると、現在中国国内のフレキシブルワーカーは約2億人に達しています(2.6億人とする数字もある)。李克強首相の記者会見でも同様の数字を報告していました。

 全労働人口が約9.2億人の中での2億人ですから、すでにかなりの割合になりつつあると言えます。製造業でもフレキシブルワーカーが増えつつあり、今後製造業全体で30%以上がフレキシブルワーカーに切り替わると予測されています。

 また、2021年新卒の大学生のうち、15.8%がフレキシブルワークを選択しているという数字もあります。

製品を掲げ、短期の工員を募集する工場関係者(広州市にて筆者が2019年撮影)

 このような動きを受け、中国政府や労働局などの行政組織はフレキシブルワーカーを個人事業主としてみなして、事業者登録を推進しています。

「競争疲れ」の若者を救う可能性も

 筆者は、若者に広がる「躺平」(寝そべり主義)を解消する手段の一つを、フレキシブルワークが果たすのではないかと考えています。

「躺平」が急速に広まった要因の一つとしては、長時間労働、自己成長の実感不足、社員同士の過剰な競争など、職場におけるさまざまな抑圧が考えられます。どんな社会や職場にも競争は存在しますが、その競争に疲れた若者たちが増えていることを示しているのかもしれません。フレキシブルワークは、そのような若者の競争疲れを救う可能性があるでしょう。

 またフレキシブルワークは、自分自身で労働時間を決められる点が、大きな魅力と映っているようです。

 さらに「若者にとっての挑戦機会」としての側面もあります。テンセント傘下の企鹅智库の調査によると、フレキシブルワーカーの34%が将来的な起業を目標にしています。これは通常の社員よりも約1.5倍多い数字です。

 フレキシブルワークの注目点の一つは、収入です。理髪師やフィットネスコーチなどの技能職では、通常の社員よりもフレキシブルワーカーの方が高い収入を得られる傾向があるようです。