「躺平」の急拡大に対しては、次の図のように痛烈な批判もされています。
若者の欲望が低下し、消費が落ち込むことで社会全体が停滞する、という悪循環を躺平が招く事態は、中国にとって何としても避けたいことでしょう。
多様化のキーワード「フレキシブルワーク」
躺平がどの程度、人々の実態を表しているのか、具体的な調査はほとんどありません。また、ほとんどがネットコミュニティ内の匿名による書き込みなので、書いてあることが本当なのか、確かめようがありません。
ただ、確実にいえることは、若者の働き方がますます多様化しつつあるということです。そのキーワードが「灵活就业」(柔軟な就業、フレキシブルワーク)です。
「灵活就业」が指すものは広いですが、
・企業との関係が短期的
・働く側が働く時間などを決定できる
という点が基本としてあります。
以前お伝えした記事「中国で急拡大する「職業掛け持ち」の実態とは」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62813)では、「職業掛け持ち」の一つの形態を、「フレキシブル勤務」という呼び名で紹介しました。ホワイトカラーやブルーカラー労働者が、本来の職業だけでなく、本業企業が認める形で、他の職業を掛け持ちする勤務形態です。新型コロナウイルス騒動によって打撃を受けた企業が、従業員の失業を防ぐために取り入れた制度で、宅配(デリバリー)産業などに多くの人材が吸収されました。
2021年の現在では、継続した雇用関係を持たず単発で短時間の仕事を請け負う「ギグワーカー」、フリーランサー、起業初期に一人で事業を行っている起業家など、多様な労働形態が「灵活就业」、フレキシブルワーカーとして見なされるようになっています。