目下の懸念材料は、2月にインドで発見されたインド変異株の感染拡大だ。英国でも4月の第1週に最初の感染が確認され、それから1カ月あまりのうちに、自治体の4割で感染が報告され、5人以上の感染が確認された自治体の数はイングランド全体の336のうち86に上り、コロナ感染の19.6%がインド変異株によるものだ。ハンコック保健相は5月19日の記者会見で、インド変異株は英国変異株よりさらに感染力が強く、英国内での感染者が2967人になったと述べた。

インド変異株に対抗するワクチン“ブースター”計画

 インド変異株の感染拡大に対して、英国政府はワクチン接種の強化で対抗しようとしている。

 英国は現在も1日50~60万回のペースでワクチン接種を進め、対象年齢は36歳まで下がった。

 これに加えて、(1)従来最大12週間だった1回目と2回目の接種間隔を8週間に縮め、(2)秋に3回目のワクチン接種を行う考えを発表し(対象は50歳以上)、ファイザー社と新たに6000万回分のワクチン調達契約を結び、(3)米国の製薬会社CureVac社に変異株に対するワクチン開発を委託し、同社から年内に5000万回分のワクチン供給を受ける契約を締結している。

 目玉は3回目の接種を行う「ブースター(増強)・プログラム」だ。これは、これまで接種されたファイザー、アストラゼネカ、モデルナの3種類のワクチンの3回目の接種を行うものだ。これによって秋から冬にかけての寒冷時期に、再び新型コロナの感染が拡大することを阻止しようとしている。この計画のため、来月初旬から3000人規模の治験を開始し、9月頃に結果をまとめる予定である。