ブースター計画の引き金になった北西部での感染拡大

 現在、インド変異株の感染が多いのはイングランド北西部で、グレーター・マンチェスター圏内のボルトン、ランカシャー州のブラックバーンなどである。ボルトンでは新型コロナの感染の81.4%がインド変異株である。

 政府はこれら地域に対して、1万4000回分のワクチン追加供給、大型検査センター設置、移動検査車の配備、100人態勢での戸別訪問(相談、検査推奨)を開始した。これは以前、ロンドン南部で南アフリカ変異株の感染を抑えるのに成功した手法だ。

 グレーター・マンチェスターは、周辺地域に比べ、移民の比率が高く、元々新型コロナの感染者数が多かった。複数の調査で、黒人、バングラデシュ系、パキスタン系の人々は、ワクチンを忌避する傾向があり、これらの中でも80歳以上の高齢者と貧困層は特にその傾向が強いことが報告されている。理由は、歴史的に白人の政府を信用していないことや、ワクチンは不妊を引き起こすといった噂を信じていたりすることだ。

 5月16日時点で、ボルトンにおける新型コロナの入院者数は18人で、このうち12人がワクチンの接種を受けていなかった。12人のうち半数以上は、少なくとも1回の接種を受けることができた人々だったが、受けていなかったという。また5人が1回目の接種を受け、1人は2回接種を受けていた。

 ハンコック保健相は「だから我々は2回目の接種を急ぐことにした」と述べており、現在1日50~60万回の接種のうち、1回目の接種者が15~20万人で、残りの30~45万人は2回目の接種者である(3月までは、この比率が逆だった)。

地下鉄の駅構内に貼られたワクチン接種を呼びかけるポスター(筆者撮影)