首相や王室も接種の優先順位を遵守

 日本では一部の自治体の長や有力者が、医療従事者や高齢者より先に接種を受け、議論を呼んでいるが、英国ではこういうことは起きていない。接種は、医療・介護従事者、80歳以上、介護施設入居者などが最優先され、次に70歳代と基礎疾患(高血圧、糖尿病、がん、呼吸器系等)のある人で、その後、対象年齢が徐々に下げられてきた。

 56歳のジョンソン首相は自分の年齢が対象になるのを待って3月中旬に、42歳のハンコック保健相は4月下旬に1回目の接種を受けた。ハンコック保健相はその少し前、「自分の番が来るのを今か今かと、電話のそばで待っている」と話していた。38歳のウィリアム王子は、接種プログラムの早い段階からキャサリン妃とともに、ウェストミンスター寺院などの接種会場を訪れ、スタッフを激励していたが、自分自身が1回目の接種を受けたのは、年齢の順番が来た5月18日である。

 英国では、接種の予約はNHSが一元管理しており、混乱はない。全国に3100カ所以上(イングランドで約1500カ所)の接種会場を設け、医師、看護師の不足を補うため、約1万人の注射打ちのボランティアを養成するなど、接種のロジスティクスは1年間近くかけて周到に練り上げられた。1回目と2回目の接種間隔を8週間に縮めた際にも、NHSから対象者に対して速やかに連絡のメッセージが送られている。

スマートフォンに送られてきた、2回目のワクチン接種の予約を早めるよう呼びかけるNHSからのメッセージ

 これらの点に関しては、前稿「感染者数激減、なぜ英国はワクチン接種で先行することができたのか」を参照して頂ければ幸いである。