韓国をさまよう共産主義の亡霊
今年4月、金日成の回顧録『世紀とともに』が韓国で出版され、書店やネット書店で売られ始めた。とても正常とは思えない。金日成の革命の歴史は全部うそだということを、北朝鮮という統制された国で暮らしている人民ですら知っているのに、韓国民はそれを信じている。韓国を共産化しようとする数多くの亡霊がさまよっているのだ。
おかしな自由が横行するこの国に向かって、私は真実を言いたいと思った。そこで作ったのが「北送在日同胞協会」だ。「北送在日同胞」に対する差別と監視、弾圧を全世界に知らせ、北朝鮮にまだ残っている在日同胞たちの「自由な往来」と自由意志による「帰郷」ができるよう、日々務めている。
私は自由民主主義の日本で8年、世界最悪の経済と独裁体制下にある金氏王朝の国で46年暮らし、再び自由民主主義の国である韓国に戻ってきた。だから脱北者ではなく「帰郷者」である。「北朝鮮は地上の楽園」といううそにだまされて地獄へ行ってきたのだ。
日本では、人道的見地から北朝鮮に自分の意思で送られた「帰国者」、北朝鮮では祖国に帰還した「帰国者」と呼ばれている。私たちの祖国は北朝鮮ではない。「北送在日同胞」である私たちは、北朝鮮と朝鮮総連の徹底した「地上の楽園説」にだまされて「北送」された。差別と弾圧を受けながらも故郷に帰ることができず、抑留されているのである。だから「誘拐抑留者」と呼ぶべきだ。
私は数多くの苦難の中、あらゆる苦しみを味わいながら流浪の人生を歩んできた。北朝鮮にはまだ、格子のない牢獄で監視と弾圧を受けている「北送在日同胞」が大勢いる。自由と人権が保障された幸せな毎日を送れるようになることを願ってやまない。
ジェットコースターのような私のストーリーには理解できない点もたくさんあると思うが、私が体験した真実であることだけは分かってほしい。
3つの国を放浪した流浪の人生で何を学んだのか、と誰かに聞かれたことがある。私はためらわずに即答した。
日本では人間が守るべき初歩的な人間性を学んだ。北朝鮮では生き残ること、強くなること、耐え忍ぶことを学んだ。韓国では、政治家と商売人にだまされてはならないことを学んだ──と。(翻訳:金光英実)