「反米」の北朝鮮と「反日」の韓国

 韓国での生活は、北朝鮮とは比較にならないほど幸せだった。しかし数年経つと、光と影が見え始め、矛盾を感じ始めた。政治には門外漢である私にすら、あれこれと問題が見えたのだ。

 2019年7月4日、日本大使館の前で「自営業者総連合会」の会員10人あまりが記者会見を開き、日本製品の不買運動を呼びかけた。「三菱」「ホンダ」「ユニクロ」などのブランドの名前が貼られた段ボールを作り、日本製品の不買を叫びながら力強く踏みつぶしている。私にはそれほどまでの反日行為が理解できなかった。理性と感情を切り離すべきではないのか。これが真の愛国だというのか。

「挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会、現在の正議連)」の代表ユン・ミヒャンは、1416回にわたって「日本軍性奴隷制問題解決のための定期水曜デモ」を行った。そうやって韓国民の心に「反日感情」を植え付けていったのである。

 これらの行動を目にしながら、独裁国家の北朝鮮と、民主主義の韓国における「反日と親日」を比較するようになった。

 北朝鮮では「金日成は抗日遊撃隊の隊長」という歴史を作り、金氏王朝の業績を称えるのに利用した。これは金日成を唯一神に仕立て上げる土台となった。一方、北朝鮮では自動車、自転車、カメラなど、日本製は高価だという認識があり、富の象徴として通用している。「日本製品不買運動」で日本製品を踏みつぶすパフォーマンスなど想像もできない。

 金氏王朝が憎んでいるのは米国だ。朝鮮戦争に参戦した米国と16カ国の国連軍のせいで、朝鮮半島の武力による統一は失敗に終わった。北朝鮮では「米国帝国主義は永遠の仇」と言われている。北朝鮮では「苦難の行軍」も300万人の餓死者が出たのも、米国帝国主義のせいであり、平和統一をできないのも米国帝国主義のせいと言われている。

 一方、韓国では反日こそが愛国者として認められる。北朝鮮では常に反米、韓国では常に反日なのである。北朝鮮は武力統一のため反米を提唱し、韓国は反日という過去に向かって叫んでいる。政治のことはよく分からないが、過去にとらわれた反日よりも、現在と未来に向けての協力関係こそ、韓国にとって賢明な戦略ではないかと思う。

 北朝鮮で金氏王朝に対する不平不満を言ったら、すぐさま政治犯収容所行きになる。しかし、韓国では大統領を侮辱しても表現の自由とされ、捕まることはない。

 朝鮮戦争も天安(チョナン)艦沈没事件(2010年、北朝鮮人民軍の魚雷により韓国海軍哨戒艦「天安」号が沈没した事件)は北朝鮮の仕業ではないという保守派の主張も、金正恩を偉人と崇める青年団体「偉人を迎える歓迎団」がソウルの光化門広場で記者会見をするのも自由だ。