自国製プラットフォームを持たない怖さ
話が少し逸れましたが、まあ、まだ私は今や一民間人だから良いのですが、正直、少なくない政治家や官僚が、結構重要なやり取りをLINE上でしていることを横目で何度も見て来たことと併せて考えると、この事故(事件?)にはかなりの危機感を覚えています。いまだ日本の中枢を占めている高齢の政治家はスマホやSNSを使いこなしていないため、結果として重要情報の漏洩リスクから遮断されているとも言えますが、今後はそうは行かないでしょう。現代の20代以下の日本の若者には、LINEを使っていない者はほとんどいないような状態です。
すでに、素人から見ると何とも不思議な形で、著名人や政治家などの要人のSNSでのやり取り(特に異性関係)がメディアに漏れて失脚するケースが散見されます。もしかすると今後は、例えば有望な若手政治家が国益のために中枢で活躍しはじめた途端、過去の妙なプライベート情報が漏洩し、売り上げアップしか考えない国賊的雑誌に売り渡され、表面化して炎上して、当該政治家が失脚しないとも限りません。こんなことは諜報の専門家でなくとも、相手国を陥れる上で容易に思いつく作戦です。
話を元に戻しましょう。上記のような警戒感もあって事実上の「国民的情報インフラ」とも言うべきLINEを利用していない私が、何とか現代日本で生活できているのは、主にFacebookのメッセンジャー機能で連絡調整を代替しつつ知人との連絡を取り合っているからです。そのFacebookからも冒頭に述べたとおり情報漏洩が起きており、真相は分かりませんが、少なくとも可能性としては、米国政府にも情報が抜かれていることを覚悟しなければならないとすると、これはもう個人情報が海外に渡るのを防ぐことが出来ません。
さらにデバイスがApple製のiPhoneだったり、使っているメールや検索ソフトがGoogleだったり、主な物品購入サイトがAmazonだったりすると、上記のFacebookと同様に、各社のスタンスに程度の差こそあれ、情報漏洩や米国政府によるデータ獲得リスクからは免れ得ないと思われます。そうなってくると、それはもう、生活の中で、韓国や中国にデータが漏れるか、アメリカに漏れるかの差であり、そうした究極の選択の中で、私はFacebookをある意味、「仕方なく」選んでいるわけです。
私はかつて経産省在職中、ペルーのフジモリ大統領来日に関する調整をしたことがありました。ちょうど2000年に差し掛かる頃でしたが、ペルーのナショナル・フラッグ・キャリア(自国の航空会社)の「アエロ・ペルー」という航空会社が運航停止になってしまった直後のことでした。他国の航空会社を使わざるを得なくなったフジモリ氏が、ファーストクラス搭乗その他に関して利用予定のチリの航空会社の融通が利かないことを嘆いていたことを耳にしました。搭乗中の通信その他、様々なリスクなども勘案して、やはり自国の航空会社はあった方が良いことを痛感しているとのことでしたが、当時の私はJALとANAを擁している日本としては考えられない悩みだと「他人事」のように感じたことを思い出します。
しかし、今や日本は、データに関しては、当時のペルーと同じ悩みを抱えるに至ってしまったと覚悟するしかないようです。