(写真:吉澤菜穂/アフロ)

(山田敏弘:国際ジャーナリスト)

 現在、国内に8600万人もの利用者を抱える無料通信アプリのLINEが大騒動になっている。

 発端は朝日新聞の報道だった。

 3月17日、同紙は「無料通信アプリ『LINE』利用者の個人情報に、中国の関連会社からアクセス可能だったことがわかった」と報じた。

 記事はこう報じている。

「同社はサービスに使う人工知能(AI)なのどの開発を、上海の関連会社に委託。中国人スタッフ4人がシステム開発の過程で、日本のサーバーに保管される『トーク』と呼ばれる書き込みのほか、利用者の名前、電話番号、メールアドレス、LINE IDなどにアクセスできるようにしていた」

 外国人が、国内サービス事業者が保有する個人情報にアクセスできるのも問題だが、今回の事案がより深刻なのは、日本国内でLINEが人々の生活に深く浸透しているばかりか、政府や自治体、民間企業なども幅広く利用している点にある。いわばLINEは、もはや公共インフラ事業者と呼んで差しつかえない。そんなプラットフォーマーの持つ個人情報に、海の向こうから中国人が自由にアクセスできる状態になっていた。その事実も衝撃的だが、なにより同社のセキュリティ意識の希薄さに愕然とさせられた。

コロナ対策に厚労省もLINEを活用

 昨年11月、筆者がアメリカでの大統領選の取材から日本に帰国した際にも、新型コロナ感染症の拡散防止のため、厚生労働省からLINEで「厚生労働省 帰国者フォローアップ窓口」という公式アカウントへの登録を促された。帰国後の2週間、LINEを通じて健康状態をモニターするためだ。日本に迷惑をかけまいと素直に登録した。

 その時に厚生労働省から渡された書類には「厚生労働省は、本取組にLINE社のサービスを利用するにあたり、LINE社から以下の確約を得ています」と書かれている。その確約とは、例えば「LINE社は厚生労働省公式アカウントを特に機微な情報を扱う可能性があるアカウントとして指定しているため、LINE社がトーク内容を本取組以外の目的で利用することはないこと」。

 この確約さえ嘘だった可能性もある。