(1)中国の脅威を明確化しない日本政府

 この構想の始まりは、安倍元首相の提言であり、これは米国も高く評価し、トランプ前大統領もこの構想を支持しインド太平洋における対中政策の重要な柱だと位置づけていた。

 しかし、安倍政権は2018年に首相以下が中国を訪問した時「日本と中国の関係は完全に正常な軌道に戻った」として習近平総書記の訪日まで要請したのである。

 経済は中国、安全保障は米国という不可解なことを日本政府は言い始めたのである。

 歯車は大きく狂い始めた。

 本来、中国の軍事的な拡張を抑止するインド太平洋構想の目的が迷走し始めたのである。

 現政権も、香港やウイグル人の人権侵害や台湾に対する中国の挑発などに対して懸念を表明しても、積極的に中国を非難することもなく、ましてや中国に対する制裁の話もない(日米2+2では踏み込んだが)。

 中国が海警法を施行して海警が軍隊として武器を使えるようになっても、相変わらず小手先の対応で「危害射撃」で何でも解決できると信じている。

 中国は日本が射撃すれば、これを中国国民に対する武力行使として宣伝し、海警も中国海空軍も軍隊としての「自衛権」を行使して最大限の反撃をするだろう。

 必要最小限の武力行使という縛りで海保も自衛隊も壊滅的打撃を受ける可能性が大きい。

 敵基地攻撃についても、北朝鮮対応の議論はあっても、脅威の本丸が中国であるということは政治家の口からも、メディアからも一切出てこない。

 問題の根源は次の通りである。