3月12日、初めて開かれたクアッドのオンライン会議。写真は米国のバイデン大統領とブリンケン国務長官(写真:UPI/アフロ)

「中国は集団虐殺などしていない」

 米中激突をスローダウンできるか――。

 3月18日の米中外交トップ会談を前にバイデン政権は、国務、国防閣僚が総出で同盟国との関係強化を図ろうとした。

 同盟国との一致団結で「強い立場」で中国と対峙しようとしたのだ。

 ところが、日米豪印のクアッド(QUAD)首脳会議は初の、しかもテレビ会議形式ということもあって(重要なアジェンダではあるが)新型コロナウイルスのワクチン対応で合意しただけ。

 平たく言えば、ワクチン提供、製造、輸送、資金提供などを4か国が分担、余剰ワクチンはインド太平洋諸国に提供しようという合意だ。

 果たして、これが中国包囲網に役立つのか、どうか。

 中国はすでに自己開発したワクチン「シノバック」を東南アジア各国に配っている。東京五輪に参加する選手全員にワクチンを無償で提供するとまで言い出している。

 クアッド首脳会議では、米国が意図する安全保障分野での具体的な進展は見られなかった。それだけではない。

 民主主義と法の支配といった価値観を共有する4か国が今、起こっているミャンマーの軍事クーデターに対する糾弾声明すら出さなかった。

 主宰したジョー・バイデン大統領の外交手腕のなさが露呈した格好だ。米上院外交委員会の共和党スタッフは筆者にこうコメントする。

「クアッドは『自由で開かれたインド太平洋構想のシンボル』なはずだ。アジア・太平洋の指導者たちがオンライン上とはいえ、一堂に会してミャンマーについて何ら声明も出せないようでは、看板倒れもいいところだ」

「クアッドに続く日韓との『2プラス2』も、米中、どちらを向いているかはっきりしない文在寅の韓国と対中戦略などやっても意味がない」

「頼りは唯一日本ということになるのだが、日本は、中国に対しては経済的、文化的な結びつきの強い漢字圏国家。米国とは中国との向き合い方に温度差がある」

「日本の関心事は尖閣諸島周辺への中国船の領海侵犯が急増していること。さらに中国政府がこれら船舶に武器使用権限を与えた『海警法』制定でどうなるのか、に危機感を抱いているだけだろう」

「端的に言えば、アラスカ会談に備えた同盟国・パートナーとの鳴り物入りの『対中包囲網』構築は、中国にとっては、痛くも痒くもなかったのではないだろうか」