会見するジョン・カービー米国防総省報道官(資料写真、2021年2月8日、写真:AP/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 アメリカ国防総省のジョン・カービー報道官(退役海軍少将)は、2月23日、「アメリカは尖閣諸島の主権に関して日本を支持しており・・・」と発言した。ちなみに国防総省報道官は国防長官補佐官(広報担当)の要職である。

 カービー報道官の発言は、「尖閣諸島には日本の施政権が及んでいる」というこれまでアメリカ政府が繰り返してきた立場から、「尖閣諸島の主権は日本にある」という立場に大幅な転換を果たしたかのように見えた。

 しかしながら、翌日の国防総省ウェブページに掲載されたカービー報道官の会見記録には、「尖閣諸島の主権に関するアメリカの政策には変更はない」との注が加えられた。そして2月26日の会見でカービー報道官は「先日の尖閣諸島に対する発言は誤りであり、尖閣諸島の主権に関するアメリカ政府の立場には変更はない」と述べ、混乱を生ぜしめたミスを謝罪した。

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 カービー報道官は一般の大学を卒業し海軍予備役将校養成学校を経て海軍将校となり、フリゲートに乗艦勤務した後、広報士官(PAO)となり、空母フォレスタルや第2艦隊司令部(第2艦隊は大西洋方面を担当)、それに第6艦隊(ならびにNATO打撃支援海軍)旗艦マウント・ホイットニーなどの広報官を担当した。広報士官は、軍艦や艦隊を指揮する(すなわち艦長や艦隊司令)の資格は有さない制限付き士官の一職種である。

 地上勤務でもブルーエンジェルス(海軍アクロバット飛行隊)、アメリカ・ヨーロッパ軍海軍司令部、統合参謀本部などの広報官を歴任した後、2012年には海軍少将(下級少将、他軍種の准将に相当)に昇任してアメリカ海軍の広報部門を統括する「US Navy Office of Information」のトップ「Chief of Naval Information」(CHINFO)に任官した(注1)。この職は海軍の主席広報官を兼ねる。