国情に合わせた新法

 海外からの自由な国土買収は、重要施設、国境離島、生活・生産インフラの占有などへ波及する懸念があるほか、①課税・徴税不可、②公共事業遅延、さらに③ソーラー機器放置、谷埋め違法産廃投棄など、ガバナンス全般の問題を惹起する。どの問題も解決は極めて困難なものになる。ゆえに、筆者は新法によって実効性のある対策がはじまることを願っている。

 これに対し、新法導入に慎重な人たちは、「実態を知られたくない」「調査によってその実態を晒されたくない」——という人たちを慮っているのか。それとも、その者たちを統括する筋からのやわらかな依頼を受け、忖度しているのか。

 政府は2019年以降、経済安保の観点で数々の情勢把握に乗り出し、土地の取得・規制については法整備のための議論を進めてきた。ただ、十分掴みきれていない。この国ではこれまで国土がどれだけ買収されてきたか、実態がわからず、現場が十分に見えていない。それゆえ今回の新法によって調査し、利用状況をまずは把握していこうとしている。

 しかし一方で、憲法第二九条ではあらゆる土地所有者(外資含む)の財産権の保障を謳い、国際的にはGATS(WTO協定)において、日本国は不動産取引に何ら制限をかけず、自由売買であることを約束してしまっている。

 真に板挟み状態にあるのだが、こうした国情にあってギリギリの到達点を探り、たどり着いたのが新法案である。現状での最善最短の途だろう。国土買収保全の前捌きとして、現状の把握(利用形態)がしっかりできる国にしていこうというものだ。

 にもかかわらず、「(新法は)地方自治体の要請に応えられていない」「新法には効力効果がない」そう発言し、混乱を待っているかのような言説を繰り返す人たちがいる。

 そうした混乱による遅延を喜ぶのは、秘匿資産を保全したい国外の資産家や、海の向こうからの指図で活動する人たちだろう。

 次世代へ主導権を残すため、今は踏ん張りどころだ。