もし今回、新法が事前届出制を欠いたり、実効性の乏しい対策ばかりを並べた規制法案として国会へ提出されるというのなら、これらの道府県条例は何のために制定されてきたのか。今一度、顧みてほしい。国会では、地方のそうした声を再確認して、法案を審議すべきだろう。

富裕層の資産隠しと提灯買い、そして・・・

 外資の国土買収に規制が必要なのは訳がある。

 日本の土地売買規制がすこぶる甘く、かつ土地データは驚くほど曖昧で不備が目立つからだ。当然、外資には無防備過ぎて、将来、ガバナンス能力を喪ってしまう懸念が大きい。

「仏、英、独も日本と同じだ。土地売買に規制はない」との反論もあろう。しかし、国土の半分(大都市圏は8割)が地籍調査未了で、所有者不明の土地を何百万ヘクタールも擁するような国は日本の他にはない。しかも個人の権利が世界一強く、憲法によって外国人所有者であろうとも土地資産(国土)の財産権が保障されている。そんなユルユル日本の手厚く保護された土地だから人気なのだ。

 現在、日本の国土を買収する者には三つのパターンがある。

 一つは、富裕層の資産隠しである。大陸の場合だと、国家(党本部)に個人資産がバレるのが怖くて隠す。日本不動産は秘匿が容易で、かつ保有コストがかからない。手口は香港のペーパーカンパニーや、日本人をダミーとしてかませる方法だ。買収後はすみやかに所有者不明となるよう海外で転売する。固定資産税等を逃れるためだ。さすれば、保有コストゼロで秘匿できる。

 二つ目は、値上がりする物件を追う提灯買いの投資家たちだ。小口も混じる。数としてはこれが多いかもしれない。転売の回転も早く、3、4年以内。日本の不動産はグローバルな観点からは、数年先、十数年先の値上がりも有望とされている。

 最後に三つ目だが、これは今回の新法制定に最も関連する。

 直接的に防衛施設や米軍基地、原発等の周辺地や、国境離島を目立たぬよう買収し、監視や通信妨害等のための諸施設として活用していく可能性を残す。外国政府の差し金と見るべきかどうかの判断は難しい。これらの買収は仕込み中のものも含めると、既に全国で少なくとも約80カ所。ソーラー用地の買収も約1700カ所あるとされる。