米アラバマ州にあるアマゾン・ドット・コムの施設で労組結成の動き(3月5日同施設で、写真:ロイター/アフロ)

 IT業界の雄、米アマゾン・ドット・コムでいま歴史的と言えることが進行中である。

 歴史的という言葉は少し大げさであるが、すでに米メディアはこの言葉を使い始めてさえいる。何が起きているのか。

 ジェフ・ベソス経営最高責任者(CEO)が2021年第3四半期で退任し、会長になると発表した時期と合致するかのように、米アマゾンでいま、初めての労働組合が結成されようとしているのだ。

 産業界において労組の結成はなにも新しいことではないが、ベソス氏がアマゾンを築き始めてから26年ほどが経つなかで、労組が生まれようとしている意義を探りたい。

 戦いの場所になっているのは米南部アラバマ州ベッセマーという町にある同社の物流施設だ。

 そこには約5800人の従業員がおり、多くが会社側に対して不満や要望を抱いている。

 ワシントン・ポスト紙を含む米メディアの報道内容を総合すると、ベッセマーで働く従業員の労働環境はあまりに過酷である。

 生産ラインでの達成目標が高いため、ほとんどの従業員は疲れ切っている。個人が会社に苦情を言っても、それによってシステムの変化までには至っていない。

 さらに会社側の新型コロナウイルス感染症対策も十分とはいえず、2021年1月に実施された検査では、従業員を含めた関係者7575人のうち218人が陽性だった。

 さらに組合がないことで、雇用主は比較的容易に解雇・採用を行使することができる環境がある。