1日に食べていい赤身肉は大さじ1杯分(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

(霧立灯:フリーランスライター)

「SDGs」「サステイナブル」──。今やメディアの中でこの言葉を聞かない日はない、というほど現代社会のキーワードになっているこの概念。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、「サステイナブル」は「持続可能な」という意味である。

 しかし、ほとんどの新しい概念がそうであるように、多くの人にとってこの言葉は捉えどころのない正体不明の概念だ。日本語に直したところでなかなかストンと腹に落ちてこない。「持続可能な」という言葉の向こう側にあるものが見えてこないのだ。

 その理由は、私たちの住むこの社会、この地球全体が抱える問題がどれほど差し迫っているかということに対する根本的な認識が欠けていることにある。「このままいくと、近い将来、この世界は行き詰まる」と言われても、多くの人にとっては現実味に欠ける。しかし、このひっ迫した現状を知って初めて、「持続可能な」という言葉の本当の意味が呑み込めるというわけだ。

 さて、そんな私たちの無理解をよそに、「持続可能な世界」を銘打った改革があちこちから聞こえてくる。SDGsは、2015年の国連サミットで採択された17つの大きな目標であり、その内容は貧困からエネルギー、環境、産業、ジュエンダー平等に至るまで多岐にわたる(参考資料)。

 ここで、17つの目標すべてを並べることは差し控えるが、そのうちのほとんどの目標に深く関わってくるのが食の問題であることに注目したい。貧困や飢餓、健康などとの関連は一目瞭然だが、環境問題、そして持続可能な産業や経済の形態とも食の問題は綿密に関わっている。

 なぜなら、環境問題の最大の原因は畜産業であるということは今や否定できない事実であるし、経済効率を優先した農業全体のあり方の延長線上に、環境破壊や健康問題が潜んでいるからである。実際、「サステイナブル」をキーワードにした食品開発や食とITを融合させたフードテックは、ここ数年で急成長している注目の産業分野だ。

「SDGs」と聞くと、多く人は政府や企業の課題だと捉えがちだ。しかし、ひとたびそれが食の問題となれば、実はそれが私たち一人一人の取り組みであることが分かってくるだろう。

 では、実際に「サステイナブルな食べ方」というのはどんなものなのだろうか。「ミートフリーマンデー」(週に1日は肉を食べない日を設ける運動)や、肉の消費量を減らそうという呼びかけはよく聞くようになった。しかし、週に1回減らすだけで本当に十分なのか、どのくらいの量を減らせばサステイナブルなのか、ということはあまり知られていない。