(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役)
コロナ禍を契機に大豆など植物由来の原料でパテやソーセージを作る「植物肉」に注目が集まっている。
(参考)「植物肉『普及元年』に コロナ契機に消費者選好」(日本経済新聞電子版、2020年10月3日)
今年(2020年)5月、新型コロナウイルスの感染拡大により米国内で食肉加工工場の操業が一斉に停止(注1)したのを受け、空きができた大手スーパーマーケットの精肉スペースを埋めたのはインポッシブル・フーズやビヨンド・ミート(注2)など植物肉のスタートアップ企業(いわゆるフードテック企業)の商品だった。
(注1)コロナ禍で米食肉大手のタイソン・フーズ、JBS USAホールディングス、スミスフィールド・フーズ、カーギルなどの食肉加工大手は一時的に工場を閉鎖した。CDC(米疾病対策センター)の推計(2020年5月1日現在)によると5000人近い労働者が新型コロナウイルスに罹患し、少なくとも20人が死亡したという。
(注2)インポッシブル・フーズ(CEO:パトリック・ブラウン)、ビヨンド・ミート(CEO:イーサン・ブラウン)はともにカリフォルニア州の植物肉のスタートアップ。前者はグーグル傘下のグーグルベンチャーズが、後者はビル・ゲイツが大株主としてバックアップしている。
調査会社のニールセンのデータによると、米国内のスーパーにおける植物肉の売上高は新型コロナ感染拡大が深刻化した3月上旬から5月2日までの9週間に264%増(2570万ドル増)となったという。
インポッシブル・フーズもビヨンド・ミートもコロナ禍以前はバーガーキング、スターバックス、マクドナルドなど大手ファーストフードやレストランなどが主要取引先だった。しかし、食肉工場の操業停止による大規模な欠品の発生とその後の精肉の卸売価格の上昇から植物肉の割高感が解消されて、大手スーパーへの販路(つまり生活者向け)が一気に拡大した。